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日野市 |
HINO |
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たかはた・まんがんじ・いしだしゅうへん |
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多摩川と浅川が市内を流れ、二つの河川が合流する日野市東部は、多摩の歴史を語る貴重な史跡や旧跡が数多く残されている。関東の名刹・高幡不動尊金剛寺をはじめ、その北側には安養寺や石田寺、そして新選組・土方歳三の生家跡がある。また近隣には、水と緑を豊かに保全する美しい遊歩道や公園が点在しており、時折足を止めて水辺や木陰で休息するのも心地よい。今回ご紹介するのは、浅川の流れる高幡・万願寺から土方歳三の故郷として知られる石田までのルート。街に残された豊かな自然を満喫しながら、日野の歴史探訪に出掛けてみよう。 |
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全長 |
約4.キロ |
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所要時間 |
約2.5時間 |
Access :電車 |
京王線高幡不動駅、または多摩都市モノレール線高幡不動駅で下車 |
Access : 車 |
国道20号で日野本町から川崎街道に入り約10分 |
おすすめ
シーズン |
春から秋にかけてのシーズンがおすすめ |
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1 高幡不動駅北口 |
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徒歩1分 |
2 若宮神社 |
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徒歩2分 |
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徒歩5分 |
4 ふれあい橋 |
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徒歩2分 |
5 大木島自然公園 |
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徒歩10分 |
6 安養寺 |
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徒歩10分 |
7 土方歳三資料館 |
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徒歩10分 |
8 石田寺 |
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徒歩1分 |
9 みなみぼり遊歩道 |
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徒歩2分 |
10 とうかん森・北川原公園 |
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徒歩15分 |
11 万願寺駅 |
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若宮神社 高幡不動尊にまつわる不思議な伝説が残る神社 |
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高幡不動駅北口から北へ延びる細道を進むと、すぐ右手にこぢんまりとした小さな神社が現れる。ここは、昔から地元の人々に大事に祭られてきた若宮神社。高幡不動尊金剛寺を訪れたことのある人は、重要文化財指定の不動三尊像を少しだけ思い出してみてほしい。創建の年代は分かっていないが、ここは金剛寺にまつわる不思議な言い伝えのある神社なのだ。
昔、金剛寺を訪れた若い旅僧が、不動明王に脇士がいないのは残念だといって二童子を造ったという。その見事な出来ばえに寺院の住職や村人が感激し、旅僧の出発には送別の宴を開き、村境まで皆で見送った。ところが、旅僧が村を立ち去った途端に忽然と姿を消してしまったので、村人たちは旅僧こそ神仏の化身に違いないと信じ、姿を消した地に社を建てたという。その社が別旅明神と名づけられ、後に若宮神社となった。境内を見回すとご神木らしき立派な木が何本も生えており、その太さから創建の古さを想像できる。
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向島用水親水路 小川のせせらぎが涼しげな緑の遊歩道 |
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若宮神社から潤徳小学校の脇を通って北へ向かうと、ほほえみ橋の架かる向島用水親水路に出る。ここは、長年使われてきた農業用の用水路を整備した水と緑を保全する美しい遊歩道である。少し回り道をして遊歩道を東へ向かって歩いてみると、小川の途中に昔ながらの大きな水車小屋を見つけた。「ほほえみ橋」の西側、潤徳小学校の裏の敷地にはビオトープも作られ、子供たちはここで水と自然の関わりを学んでいる。流れのおだやかな水面に蓮の葉が広がり、葉の上にお椀のような白い花が咲いているのが可愛らしい。 |
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向島用水親水路 |
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水車小屋 |
ほほえみ橋の下を泳ぐ鯉の群れ |
小学校裏のビオトープ |
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ふれあい橋・大木島自然公園 浅川の流れと樹木が広がる公園でちょっとひと休み |
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向島用水親水路を西へ抜けると、急に視界が広がり、浅川の流れにぶつかる。その浅川の上には平成3年に完成したふれあい橋が架かり、青空をバックに美しいラインが浮かび上がっている。この橋の正式名称は万願寺歩道橋。天気がよければ橋の上から富士山が見えるというが、あいにく薄雲が広がり見えなかった。代わりに、橋の下に整備されている土手から浅川の水辺に下り、少しだけ水に触れてきた。
橋を渡り、対岸に着いたら左の方へ伸びる道へと入る。「誠」マークのついた道標や車止めのある歩道を進むと、すぐ左手に大木島自然公園がある。北側に用水が流れ、雑木林が広がる静かな広場で、木陰のひと休みにはちょうどいい公園だ。 |
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ふれあい橋 |
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「誠」マークの道標が建つ歩道 |
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水辺で遊べる浅川の土手 |
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大木島自然公園 |
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安養寺 武家屋敷の情緒が漂う江戸時代建立の本堂 |
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大木島自然公園から日野バイパスを渡り、そのままバイパスに沿って東へと歩く。この辺りの地域は万願寺という地名だが、万願寺という寺は寺跡も寺歴も残っていない。そう聞くとなんだか奇妙な感じがするが、代わりにこの土地の歴史に関わる貴重な寺院が残されている。
バイパス左手の墓地の脇を入っていくと、つき当たりに田村山極楽院安養寺がある。入口は寺院のように見えるが、境内に入って本堂を目にすると、なんとなく寺院の雰囲気と違う感じを受ける。安養寺の創立は明らかではないが、中世のこの地方の豪族であった西党日奉氏の一族、田村氏の居館跡だと伝えられている。この武家屋敷のような美しい本堂は再建されたもので、昭和57〜58年の修理時の調査によれば、建立時期は18世紀初頭をくだらないものと見られている。建物は方丈形式で寄棟造、屋根は元々茅葺きであったが、修理時に銅板葺とした。
本尊は、平安時代の様式を留める木造の阿弥陀如来坐像で都指定有形文化財。また鎌倉時代初期の作といわれる木造の毘沙門天立像は市指定有形文化財となっている。
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安養寺 |
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多摩八十八ヶ所霊場 第八十五番札所
関東八十八ヶ所霊場 第六十八番札所
日野七福神 毘沙門天 |
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日野バイパスを東へ |
安養寺は書院風の美しい寺院。本堂は市指定有形文化財 |
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土方歳三資料館 生家跡で見る歳三ゆかりの品々に往時を偲ぶ |
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さて、安養寺から再び日野バイパスを渡ると、そこから東の地域は石田という地名に変わる。石田は新撰組副長・土方歳三の出生地であり、浪士組として29歳で上洛するまで過ごした故郷の地である。その歳三の実家跡が現在でも残っているというので訪ねてみることにした。バイパスの一本南側の道路を入り、モノレールの高架に差し掛かる手前の住宅街に、今も現地に住む土方家の親族が経営する土方歳三資料館がある。
近代的な住宅建築と門の外に掛かる「土方」の表札に、ここは本当に子孫の方が住んでいるお宅なんだな、というおかしな納得と感動を覚える。元々、土方家の家は、さらに東方の多摩川と浅川が合流する辺りに建っていたそうだが、弘化3年(1846年)に洪水の被害に遭い、現在地に移転したらしい。その生家も平成2年に建替えが行われ、同時に住宅の一部を改築した資料館が開館することになった。
個人宅のため館内は広くないが、石田散薬の薬箱や、刀傷のある鉢金、鎖帷子と籠手、手紙、そして愛刀の和泉守兼定など、歳三ゆかりの貴重な資料が公開されている。残念ながら、和泉守兼定の刀身は毎年5月11日の歳三の命日の頃に特別展示されるものなので、期間外のため見ることができなかったが、鳳凰と牡丹の意匠が入った会津塗りの美しい鞘は常時展示されている。 |
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[写真左] 土方歳三資料館入り口
[写真右] 石田散薬の原料となる牛革草。浅川などの河川に生えている |
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石田寺 函館から故郷へ帰った歳三の魂が眠る寺 |
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土方歳三資料館よりさらに東の住宅街を進み、多摩川に程近い石田寺へと向かった。愛宕山地蔵院石田寺は、多摩川と浅川の合流点近くにある真言宗の寺で、かつてこの辺りに生家があったという土方歳三の墓石があることで知られている。寺の創建は南北朝時代の康安元年(1361年)、吉祥坊慶興の建立と伝えられ、木造、入母屋屋根、瓦葺きの本堂と、その正面に北向観音堂、そして見事なカヤの巨木がある。
このカヤの木は目通りの太さ4.5m、樹高26mの雌株で、推定樹齢は400年以上。それだけ長生きしている木ならば、きっと幼少からの歳三をよく知っているに違いない。そのカヤの木の脇から墓地へ入ると、すぐ右手に歳三の墓がある。函館で戦死し、現地で埋葬
されたために墓に遺骨はなかったが、平成17年、土方家や菩提寺関係者が函館へ赴き、歳三埋蔵伝承の地である5ヶ所の土地から土を持ち帰り、その土を骨壷に入れて墓に納めた。歳三の魂は136年ぶりに故郷へと帰り、幼少の頃の思い出のつまった石田の地に眠っている。 |
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石田寺 |
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多摩八十八ヶ所霊場 第八十六番札所
日野七福神 福禄寿 |
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土方家のそばを通るモノレールの高架をくぐり
石田寺へ |
石田寺本堂
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市指定天然記念物のカヤの木 |
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みなみぼり遊歩道・とうかん森 住宅街に今も残る古く荘厳な森 |
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石田寺の東側に回ると、広大な浅川水再生センターがあり、その脇に小さな遊水路が通るみなみぼり遊歩道がある。あずまややベンチもあるので、少し休憩していくのもいい。
そのまま道なりに北へ数分歩いていくと、左手の住宅街の中に突如として木々の生い茂る森が出現する。ここはとうかん森と呼ばれる森で、江戸中期に土方一族(十家余)によって祀られた稲荷大明神の社があり、その小さな社を守るようにして巨木が枝葉を絡めて天に伸びている。森はムクノキ5本、カヤ2本、フジ、ヒイラギで形成されており、中には樹高20mを越す大木もある。大木の数本は、樹齢250年と推定される古木だという。社の下から伸びるフジの木がまるで大蛇のようにほかの巨木に絡みつき、森の力強さを感じる。不思議な静けさが支配する深閑とした空間で、ここだけ時が止まっているかのようだ。 |
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みなみぼり遊歩道 |
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市指定天然記念物のとうかん森。とうかんの呼称は「稲荷」や「十家」の音読みに由来するとも伝えられる |
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北川原公園 見晴らしのよい屋上の公園から多摩川の土手へ |
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とうかん森をもっと高いところから見下ろせるところがある。みなみぼり遊歩道の出口付近にある階段を上り、北川原公園の前に立つと、木々の高さがどれ程か確かめることができる。ところでこの公園、入口が階段という奇妙な設計となっているが、上ってみるとあらためてビックリ!なんと浅川水再生センターの処理場の上に造られた公園だった。園内に入ると、ここが建物の屋上とは思えないほど広大な広場が広がっており、やけに芝生が生え揃っているのも不思議な感じがする。3階の高さにあるので眺めはよく、近隣の住宅街や多摩川の土手も見下ろせる。日除けがないので夏は暑いが、空が広い公園だ。 |
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北川原公園入口の階段 |
北川原公園。浅川水再生センターの処理場上にある |
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北川原公園を突っ切り、東側の階段を下りて多摩川土手を北に向かって歩けば、多摩都市モノレールの万願寺駅に着く。今回のウォーキングはこの万願寺駅に着いたところで終了。帰りはモノレールで立川駅、または高幡不動駅へと戻り、JRか京王線で家路に着こう。また新撰組ゆかりの地が散らばる日野駅周辺に興味がある人は、立川駅から中央線に乗り、隣の日野駅を訪ねてみるのもいいだろう。 |
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多摩川土手の遊歩道を北へ |
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多摩都市モノレール「万願寺駅」 |
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【取材後記】 〜高幡・万願寺・石田近隣の〜クウ・ネル・アソブ〜 |
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石田という土地には、やけに「土方」の表札が目に付く。やはりみな歳三の親戚なのだろうかと、土方歳三資料館にいた親族の方に尋ねてみると、全てが親戚ではないという返答だった。単に石田村には昔から土方姓が多く住んでいるということらしい。それだけ転居を好まない地域なのか、ここには往時に流行った地元の名産を愛する古い住人もいたほどで、ほんの数十年前まで近所の老人が「石田散薬」を買いに来たという、驚くべき話も聞いた。それにしても、飲んでよし、塗ってよしという薬だったようだが、果たしてこの薬にどれほどの効き目があったのだろう。ちょうど日野市で郷土資料館が主催する「石田散薬をつくろう」という講習会が夏場に開かれると聞き、かなり興味をそそられた。川岸で牛革草を収穫するところから火薬のような黒い粉末に仕上げるまでの工程を学べるそうで、とても面白そうである。こういった地元の文化や歴史を伝える活動は、ぜひとも続けて頂きたい。
さて、今回オススメするクウ・スポットは、万願寺駅近くにある中華そば店、味の丸嘉。昔ながらの懐かしい味の醤油ラーメンと手作り餃子が美味しい。また休憩を楽しむネル・スポットは、浅川の流れが涼しげなふれあい橋下の土手か、木陰の多い大木島自然公園が気持ちいい。アソブ・スポットを探すなら、モノレールに乗っていざ立川へ。立川駅周辺ではショッピング&グルメのほか、シネマシティで話題の映画も楽しめるゾ!
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取材担当:美月春菜 |
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