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よこたきちしゅうへん・さかぐら・たまがわ |
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西多摩に位置する福生市は、米空軍横田基地のある街として知られ、外国人が住む異国のような街の雰囲気が多くの若者たちを惹きつけてきた。そこで生まれた独特の融合文化は様々なアーティストに影響し、国道16号線界隈は現在も若者たちの文化発信地となっている。そんな異国的な雰囲気の東部とは打って変わり、市の西部には多摩川と玉川上水が流れる自然豊かな風土が広がっている。豊富できれいな水を利用した地酒の造り酒屋が江戸時代より発展し、また古く貴重な寺社や文化財が点在するなど、自然と歴史が根づいた日本の郷土らしい風景が残されている。今回は、この両極の文化を持つ福生市内の街並みをご紹介する。外国文化と日本文化、そして自然の美しさに触れる道は、ほかでは味わえない面白いウォーキングコースだ。 |
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全長 |
約6.5キロ |
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所要時間 |
約2.5時間 |
Access :電車 |
JR青梅線で「牛浜駅」下車 |
Access : 車 |
八王子ICから国道16号線を川越方面へ約20分 |
おすすめ
シーズン |
多摩川沿いの桜並木が開花する春のシーズンが美しい |
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1 牛浜駅 東口 |
↓ |
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徒歩10分 |
2 国道16号・第5ゲート前 |
↓ |
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徒歩25分 |
3 国道16号・東福生駅入口 |
↓ |
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徒歩25分 |
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↓ |
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徒歩10分 |
5 清岩院 |
↓ |
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徒歩12分 |
6 多摩川中央公園 |
↓ |
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徒歩12分 |
7 牛浜駅 西口 |
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国道16号線と米空軍横田基地 限りなくアメリカに近い横田基地前ストリート |
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牛浜駅東口を出てから南に進み、東西を横切る五日市街道を東に向かって10分ほど歩くと、南北を走る国道16号線にぶつかる。車通りの激しい4車線の向こう側はちょうど第5ゲート前。ここを初めて訪れる人には驚異的な光景に見えるだろうが、この16号線の東側一体に広がる広大な敷地全てが米空軍横田基地である。つまり、国道沿いに張り巡らされたフェンスと高い塀の向こう側には、米軍施設が建ち並ぶアメリカがあるのだ。普段は中に入ることができないが、ひとまずここから見える広大な横田基地の外貌を眺めて頂きたい。
もともとこの横田基地の敷地は、旧日本陸軍の多摩飛行場であった。だが終戦を迎えた昭和20年、米軍の進駐により飛行場は接収され、翌年には横田基地として公式に開設された。その後敷地は拡張されていき、福生市をはじめ立川市、羽村市、瑞穂町など多摩地区6市町にまたがって所在する巨大基地となった。現在では沖縄を除く本土最大の米空軍基地として、また在日米軍司令部と第5空軍司令部が置かれる極東の主要基地として、その機能と任務を果たしている。 |
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JR牛浜駅東口 |
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米空軍横田基地 |
毎年8月の土・日に行われる日米友好祭では基地内が一般開放される。
写真右:フェンスの向こう側は全て基地の施設 |
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それだけ巨大な横田基地が行政面積の3分の1を占める福生は、まさにアメリカと隣り合った街。市内には英文の看板や米軍関係者の姿を多く見かけ、街中は異国の雰囲気と異文化の香りが漂っている。第5ゲート前から16号線に沿って商店街を北に向かって歩いてみよう。そこには戦後間もない頃から駐留アメリカ兵に向けて商売をしてきた土産物屋やテーラー、また近年に開店したエスニック雑貨店や古着、輸入雑貨店、レストラン、バーなど、50軒ほどの商店が建ち並んでいる。洒落た店先やレトロな雰囲気のある店構えを冷やかしながら歩くのは、まるで外国を旅行しているような気分で、実に楽しい通りである。 |
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16号線沿いに連なる商店 |
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店先には輸入雑貨や衣服、オブジェなどが並ぶ。 |
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米軍ハウスの家並み 福生舞台の小説とアーティストたちを育んだハウス文化 |
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国道16号線の裏手の住宅街には、1950年代に基地周辺を埋め尽くした平屋の米軍ハウスが今でも所々に残されている。米軍ハウスとは、当時家族持ちの駐留アメリカ兵のために建てられた庭付きの一戸建て住宅であるが、60年代後期には空き家が増え、代わりに福生にもたらされたアメリカ文化や音楽に傾倒する日本の若者たちが次々とハウスに移り住むようになった。特にミュージシャンや画家、写真家、小説家などのアーティストたちが多く移住し、かつては桑田圭介や忌野清志郎、大滝詠一らもハウスの住人だった。そこで育まれたポップカルチャーは福生から全国に向けて発信され、村上龍は小説『限りなく透明に近いブルー』で日本の若者たちとアメリカ人が織り成すドラマを発表し、世の中に衝撃を与えるとともに福生という地名を全国的に知らしめた。
そんな経緯を辿る米軍ハウスは、現在でも至るところに残され、住宅街の中でも独特の雰囲気を放って存在している。少しだけ回り道をして住宅街の中のハウスを見学しながら歩いてみるのもいいだろう。ただハウスには居住者がいるので、勝手に家の中を覗いたり、不躾に写真を撮ったりして、住人や近所の人々に迷惑をかけないように。 |
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住宅街の中にある教会 |
村上龍著「限りなく透明に近いブルー」は福生を舞台にした小説。 |
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田村酒造 江戸時代創業の伝統と格式ある多摩の造り酒屋 |
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16号線を東福生駅入口まで歩くと、賑やかな商店の連なりもそろそろ途切れてくる。そこからは道を左に入り、西の方角へと進もう。道なりに歩いていくと、途中、JR青梅線の福生駅が出てくる。小さな駅だが駅前は商店が沢山建ち並び、結構な賑わいだ。この商店街では毎年8月には盛大な七夕まつりが開催される。その福生駅を通り越してさらに西に進み、奥多摩街道を右折して少し北へ。玉川上水の橋を渡り、西側に広がる住宅街を入っていくと、黒い板塀と白壁の蔵が建ち並ぶ独特な雰囲気を持った田村酒造の工場が現れる。
清酒「嘉泉」の醸造元である田村酒造は、創業180年の伝統を持つ格式ある造り酒屋だ。最初に目に入るのは、大正初期に建築されたというレンガ造りの高い煙突と、その屋根の軒下に下がる大きな酒林(杉の葉で作られた球形の飾り)。この酒蔵には、いかにも古くから醸造業を営んできたという威厳と貫禄、そして骨董品のような底光りする美しさがある。敷地内には樹齢数百年のケヤキの大木が繁り、江戸時代に取水権を得たという玉川上水からの分水が流れ、また創業時から仕込み水として使用してきたという井戸など、江戸時代からの歴史や風情がそのままに残されており、目にする価値は高い。 |
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田村酒造 |
住所 |
東京都福生市福生626 |
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電話 |
042-551-0003 |
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酒蔵見学 |
8:00〜17:00
10人以上から要予約
見学休業日:月・日曜・祝日 |
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普段は酒蔵の中を公開していないが、内部見学を希望する場合は10名以上の団体から予約を受け付けている。見学は解説付きで、敷地内の案内、酒蔵見学、利き酒などが体験でき、酒造りの工程をじっくり楽しく学ぶことができる。
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黒い板塀と白壁の蔵。酒蔵独特の風情がある。 |
軒下の酒林 |
清酒「嘉泉」。創業者が仕込み水として掘り当てた井戸水を「喜ぶべき泉」と命名したことに由来する。 |
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清岩院 湧水の流れる美しい日本庭園がホッと心安らぐ |
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田村酒造から奥多摩街道へ戻り、そのまま街道を南へ。突き当りを右へ曲がり、玉川上水を越えた先に、応永年間(1394〜1428年)建立の清岩院がある。
清岩院は本堂と弁天堂、そして珍しい車地蔵があり、本堂の前には湧水の流れる美しい日本庭園が広がっている。池の中を覗くと、色とりどりの鯉が泳いでいた。その庭園越しに眺める本堂の景色は、ひと際荘厳で美しい。
寺院には、ほかに市指定有形文化財の菩薩立像や、市指定有形民族文化財の元禄十二年銘庚申塔などが所蔵されており、歴史的芸術的に価値の高い貴重な文化財を有している。また日本庭園内を流れる湧水は、東京名湧水57選にも選ばれている。
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多摩川中央公園 季節ごとに自然を楽しめる多摩川べりの市営公園 |
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清岩院から奥多摩街道を通って南西に歩けば、12分ほどで多摩川に着く。河川敷には多摩川中央公園が広がり、犬の散歩をする人や、ジョギングをする人、スポーツを楽しむ人々の姿が見える。ここまで歩いたら、公園の開放的な野原で一休み。整備の行き届いたきれいな公園は、実に気持ちよくのんびりと休憩することができる。
園内には、ツツジ、水仙、花菖蒲、萩などの様々な植物が植えられており、季節ごとに花を楽しめるほか、小川が流れていて楽しそうに水遊びをする子供の姿がほほえましい。
河川敷周辺は桜の名所で知られ、春の開花シーズンには多摩川土手を2.5kmに渡って続く桜並木が、非常に美しく見ごたえ充分。夏は公園内のバーベキュー施設が人気。市外からの利用客も多い。広大な公園なので、バトミントンやフリスビー、凧揚げなど、身体をのびのび動かす遊びが満喫出来る。家族や気の合う仲間たちとお弁当を広げ、ここで一日を過ごすのもいいだろう。 |
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多摩川中央公園から五日市街道を東へ辿れば、12分ほどで牛浜駅に着く。今回のウォーキングは、出発地点の牛浜駅に戻ったところでゴール。帰りはJR青梅線で立川方面、または拝島駅経由の八高線で八王子方面へと向かえば、帰り道の買い物や食事にも便利だ。 |
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ちょっと足を延ばして 熊川神社、石川酒造から拝島駅へ |
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元気がある人には、多摩川中央公園から、さらに南へ下り、JR拝島駅へと向かうコースがおススメだ。途中、熊川の段丘の上に建つ熊川神社に立ち寄ってみよう。
ここは村の鎮守神である大国主命を祭る神社だが、七福神も祭られており、参道の両脇には七福神の石造が間隔をあけて建っている。正面拝殿奥の本殿は1597年建築の一間社流れ見世棚造りで、東京都では2番目に古い社殿。この本殿は東京都指定有形文化財にもなっている。また、市の有形文化財に指定された木造寄木作りの狛犬像や、祭神生石命画像など貴重な文化財を所蔵しており、境内の裏手には村人の歴史を展示した資料館も併設されている。 |
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石川酒造 |
住所 |
京都福生市熊川1番地 |
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電話 |
042-553-0100 |
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酒蔵見学 |
8:30〜17:30
10人以上から要予約
見学休業日:土・日曜・祝日 |
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熊川神社の南、陸橋通りを渡った先には、福生にあるもう一つの酒蔵、石川酒造がある。こちらの酒蔵にもぜひ足を運んで頂きたい。
石川酒造は1863年創業で「多満自慢」の醸造元。やはり白壁の蔵と黒板塀に囲まれた酒蔵特有の外観で、敷地内には仕込み水の井戸水、各種地酒を販売する売店、また古い蔵を利用したレストランや資料館などがあり、まるでテーマパークのようで楽しい。またここでは地ビールの製造も復活させており、敷地内のそば処やレストラン内で料理とともに地酒や地ビールを堪能できる。酒蔵見学は10人以上の団体からの受け付けで予約が必要。
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【取材後記】 国道16号線・多摩川中央公園近隣の〜クウ・ネル・アソブ〜 |
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米軍機の飛行機雲 |
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今回のウォーキングは「福生」。この地名を初見で正しく読める人はきっと少ないだろう。ふくお、ふくい、ふくぶ、ふくせい、ふくしょう…。と、頑張ってみても、初めて目にする人にはなかなか当たるマイ。正しくは「ふっさ」。なんてかなり珍しい読み方をするのだが、地名の由来は地形説、アイヌ語説などいろいろあり、いまだにはっきりとした結論は出ていないらしい。とはいえ「福が生まれる」という字が当てられているというのは、なんとも縁起がいい。かつて昭和の時代に「幸福駅」が流行りし頃、福生もそのネーミングを理由に一時話題になったのだそうだ。
さて、そんな福生を満喫する今回のクウ・ネル・アソブ。クウはやはり16号線沿いのレストランやカフェがおススメ。アメリカンダイナーやアジアンレストラン、老舗のイタリアンや人気の中華など、美味しいお店が沢山ある。そして、ネルとアソブはもちろん自然がいっぱいの多摩川中央公園。土手でのお昼寝は気持ち良く、園内でのバーベキューやスポーツはとても開放的だ。今回一度に全てを満喫できなかった人は、福生に何度も通ってみては?そのうち「福が生まれる」ミラクルがあなたにも起こるかもしれない!
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取材担当:美月春菜 |
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