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ゆしまてんまんぐう ほんごう こいしかわこうらくえん
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東京23区の中心部に位置する文京区は、大学が多く集まり、また文人たちのゆかりの地が点在する、まさに「文教の街」。東京の古い街並みが残る湯島・本郷周辺には、史跡や文化財、庭園などがあり、文学・歴史・文化を感じながらの散策がとても楽しいところだ。今回は、梅が咲く初春の湯島天満宮を訪れ、歴史ある東京大学のキャンパスや、文人たちが暮らした本郷、風光明媚な小石川後楽園などを巡る文教散策ウォーキングをご紹介。ここに来なければ見られない文化財も多くあるので、ぜひカメラを持って出かけよう。 |
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全長 |
約6キロ |
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所要時間 |
約4時間 |
Access :電車 |
JR御徒町駅下車 |
Access : 車 |
国道4号線から春日通りを西へ約1分 |
おすすめ
シーズン |
2〜3月の梅開花シーズン |
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1 御徒町駅 |
↓ |
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徒歩10分 |
2 旧岩崎邸庭園 |
↓ |
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徒歩1分 |
3 湯島天満宮 |
↓ |
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徒歩15分 |
4 東京大学 |
↓ |
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徒歩15分 |
5 本郷・樋口一葉旧居跡 |
↓ |
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徒歩5分 |
6 文京ふるさと歴史館 |
↓ |
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徒歩8分 |
7 文京シビックセンター
(文京区役所) |
↓ |
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徒歩15分 |
8 小石川後楽園 |
↓ |
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徒歩20分 |
9 神楽坂 |
↓ |
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徒歩1分 |
10 飯田橋駅 |
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旧岩崎邸庭園 豪華な近代建築に上層階級の優雅な暮らしを垣間見る |
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JR御徒町駅北口を出発し、春日通りを西へ向かって10分ほど歩くと、湯島天神の門前町、湯島に到着する。この辺りの北側にはちょうど上野公園の不忍池が広がっており、その西側の池之端に、まるで湖畔に建つ貴族の別荘のような美しい洋館と閑静な庭園がある。ここは明治29年(1896)に建築された三菱創設者・岩崎久弥の本邸。明治時代の上層階級の邸宅を代表する歴史的文化財で、洋館内部には華麗な装飾や調度品も残っている。春日通りから少し路地を上がったところにあるので、ぜひ立ち寄っていこう。 |
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開園時間 |
9:00〜17:00(入園は16:30まで) |
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入園料 |
一般400円、65歳以上200円、小学生以下および都内在住・在学の中学生は無料 |
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洋館は木造2階建て、地下室付きの17世紀英国ジャコビアン様式を基調とした建築。鹿鳴館、上野博物館、ニコライ堂などを手掛けたジョサイア・コンドル氏の設計で、国指定重要文化財 |
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暖炉のある1階中央ホール。洋館は岩崎家の集まりや賓客を招いてのパーティーなどに使用された。1階は食堂や書斎、2階には客室や集会場がある。 |
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金唐紙の壁紙を用いた豪華な客室 |
イスラム風デザインの婦人客室 |
2階ベランダのイオニア式装飾の列柱 |
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陽光がたっぷりと入り込む明るいサンルーム |
日本刺繍の美しい装飾 |
1階ホールの暖炉 |
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洋館の西側には、岩崎家の居住空間となっていた和館へとつながる渡り廊下が通っている。この畳敷きの廊下を抜けると、書院造りを基調にした3つの広間があり、洋館とは別世界の純和風建築の粋を垣間見ることができる。和館を出れば広大な庭園が広がり、約17,000uの敷地の広さを実感できるだろう。庭園には別棟の撞球室(ビリヤード場)も建っており、ここもまた洋館と地下でつながっているというから驚きだ。 |
洋館と和館を結ぶ渡り廊下 |
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書院造りの広間。明治の日本画家、
橋本雅邦作の障壁画が残る |
国指定重要文化財の和館。施工は
政財界人の屋敷を多く手掛けた大河喜十郎 |
庭園も洋風の芝庭と和風庭園の
両方が設えられていた |
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スイスの山小屋風の撞球室(ビリヤード場)。設計は洋館と同じくコンドル氏で、国指定重要文化財 |
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袖塀には岩崎家の家紋である三階菱が刻まれている。この三階菱が三菱の社章(スリーダイヤ)となった |
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湯島天満宮・梅まつり 学問の神様と梅の花に華やぐ境内 |
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旧岩崎邸庭園と春日通りを挟んだ南側には、天神様として親しまれている湯島天満宮がある。2月下旬に入り、受験シーズン真っ只中の境内には、受験生たちの願いが込められた絵馬がどっさりと掛けられ、学問の神様・菅原道真公を祀る社殿には多くの参拝客が詰めかけていた。同時に2月上旬から3月上旬のこの時期は、ちょうど梅まつりのシーズン。梅林の梅はまだ開花には早かったが、境内は屋台がひしめき合い、祭りらしい活気ある賑わいを見せていた。 |
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湯島天満宮 |
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合格祈願の絵馬 |
梅が咲き始めたばかりの梅林 |
拝殿に飾られた梅の盆栽 |
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湯島天満宮は御宇2年(458年)の創建と伝えられ、祭神は天之手力雄命と1355年から奉祀された菅原道真公。学問の神様として名高く、また江戸時代より梅の名所としても知られている。
境内の梅園は樹齢70年から80年の木が約300本あり、東京の春を告げる行事として毎年述べ45万人もの人が訪れている。 |
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梅林の8割は白梅 |
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男坂(写真)と女坂の斜面にも梅林が広がる |
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東京大学 由緒ある建造物が建ち並ぶ本郷キャンパス |
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昭和初期まで都電が走っていたという切通坂から、そのまま春日通りを本郷三丁目まで歩いていく。交差点で本郷通りを北へ入ると、にわかに人通りも多くなり、街もどこかアカデミックな雰囲気が漂ってくる。右手に研究所らしき建物が見えてくるが、ここが東京大学の本郷キャンパス。しばらくすると、かの有名な赤門が現れ、その重厚な造りと赤一色の色使いに思わず圧倒されてしまう。言わずと知れた「狭き門」の東大だが、敷地内は建物内部を除いて一般向けにもオープンしている。赤門からも入れるので、ぜひキャンパスの中を散策してみよう。
東京大学の赤門。文政10年(1827)建立の旧加賀屋敷御守殿門で国指定重要文化財。本郷キャンパスが加賀藩前田家上屋敷跡に立地することを示す遺構の1つ |
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コミュニケーションセンター。東大の研究活動
から生まれた商品を展示・販売する拠点 |
正門前のイチョウ並木。明治38年(1905)
頃に植栽されたもので、樹齢は約120年 |
アーケードのある昭和10年
(1935)竣工の法文1号館 |
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安田講堂。大正14年(1925)竣工、高さ39.7mの講堂で、
東大のシンボル。現在は学術講演会や卒業式などに使用されている |
旧加賀藩屋敷の育徳園心字池。夏目漱石の『三四郎』の
舞台になって以来、三四郎池の名で親しまれている |
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総合図書館。関東大震災後、ロックフェラー財団の寄付により昭和3年(1928)に建設された |
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正門。赤門の北側にあり、イチョウ並木と安田講堂を結ぶ |
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本郷・樋口一葉旧居跡 明治の文人たちが愛した町 |
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東大正門前から本郷通りを横切り、そのまま正面の小路を入っていけば、古き良き東京の面影を残す本郷の町へとつながる。この辺りは台地と谷が交錯する地形のため、坂と細い路地が多く、また多くの文人が住んでいた町として、坪内逍遥、石川啄木、徳田秋聲、樋口一葉の旧居やゆかりの地などが残っている。新坂から菊坂、炭団坂へと向かうコースをしばし文学に浸りながら散策するのも楽しい。炭団坂の先には文京ふるさと歴史館もあり、本郷界隈の歴史を詳しく学ぶことができる。
本郷通りから本郷・新坂へ |
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啄木が暮らした蓋平館別荘跡(現・太栄館) |
太栄館前に建つ啄木の歌碑 |
新坂。江戸時代に開かれた古い坂 |
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菊坂。この辺りに菊畑があったため、菊坂と名づけられた |
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菊坂にある一葉ゆかりの伊勢屋質店跡。
母と妹とともに本郷へ移り住んだ一葉は、この質店に頻繁に通い、苦しい家計をやりくりした |
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樋口一葉旧居跡。細い路地の奥にあり、
古い井戸だけがその面影を残している |
炭団坂。本郷台地から菊坂の谷へ下る急坂で、
現在は53段の階段が刻んでいる |
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炭団坂の坂上にある坪内逍遥旧居跡。
逍遥はここで『小説神随』を発表した |
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文京ふるさと歴史館 |
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歴史館では江戸の武士や町人たちの
暮らし、学者・文人たちの足跡なども展示 |
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文京シビックセンター(文京区役所) 地上25階から見渡す東京の風景 |
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アクセス |
東京メトロ丸ノ内線 後楽園駅 4bまたは5番出口【徒歩3分】 |
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炭団坂から再び春日通りに出て、そのまま春日町方面へ。前方左手には後楽園遊園地が見えてくるが、その右側にそびえる一際高い高層ビルは、なんと文京区役所が入った文京シビックセンター。センターの25階には展望ラウンジがあり、東京市街はもちろんのこと、富士山や秩父連峰、筑波山などを望む330度のパノラマビューが楽しめる。展望レストランもあるので、ちょっと寄り道して休憩していくのもいいだろう。 |
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小石川後楽園 中国趣味あふれた水戸黄門の大庭園 |
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東京ドームの北側を歩き、後楽公園からぐるっと西側の道を回ると、小石川後楽園の入口に辿り着く。後楽園といえば、若い世代は隣の遊園地の方が馴染み深いと思うが、都会の中の静かな庭園はカップルにも人気のようで、散策する若い人たちの姿をちらほら見かけた。ここは寛永6年(1629)に水戸徳川家の初代頼房が造った上屋敷の庭園で、二代藩主の光圀の代に完成したという水戸黄門ゆかりの地。池を中心にした回遊式築山泉水庭という中国趣味を取り入れた様式にも特徴があり、国の特別史跡・特別名勝の二重指定を受けている。園内には梅林や菖蒲園、桜、紅葉もあり、季節の花が都会の深山に彩りを添えている。 |
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開園時間 |
9:00〜17:00(入園は16:30まで) |
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入園料 |
一般300円、65歳以上150円、小学生・都内在住在学の中学生は無料 |
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石の配置が美しい園内の石畳 |
江戸時代の風流な酒亭の様子を表した九八屋 |
橋が水面に映ると満月の形になる円月橋 |
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梅を好んだ光圀公の梅林 |
梅は紅梅、白梅など20種類ほどが咲く |
梅林の向こうに東京ドームが覗く |
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神楽坂 花街の面影を残す賑やかな商店街 |
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小石川後楽園から飯田橋の交差点を渡り、大久保通りから神楽坂通りへと歩いていこう。明治期は町人の町、昭和期は花柳界として賑わった神楽坂には、趣のある坂道や横丁などの古い街並みが残り、史跡や料亭もあって大人が楽しめる街。ひと回りしたら、老舗の味をお土産に買うのもいいだろう。神楽坂を東に下れば、ウォーキング終点の飯田橋駅はすぐそこだ。 |
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三年坂。堀部安兵衛が高田
馬場の決闘に向かう際、
ここを駆け抜けたといわれる
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沢山の商店が集まる神楽坂通り。
江戸時代は江戸城の牛込見附門と
大老坂井忠勝の屋敷を結ぶ通りだった
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毘沙門天(善国寺)。寛政4年(1792)に
移転してきた日蓮宗池上本門寺の
末寺で、江戸時代から縁日で賑わう |
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本多横町。
縁日と花柳界の賑わいで
多くの人々に親しまれた |
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【取材後記】 湯島天満宮・本郷・小石川後楽園周辺の歩き方ポイント |
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文京シビックセンターから眺めた現在の本郷 |
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武蔵野台地の東端に位置する文京区は、台地と谷が織りなす坂の町。東京にある433の坂のうち、115もの坂が文京区に集中しています。緑豊かな町には文豪が集まり、界隈は料亭や花柳界で賑わい、大通りには都電が走り、東京帝国大学の学生たちが通りを闊歩する…。街を歩いていると、そんな往時の東京の風景が目に浮かびます。東京大学を訪れるなら夏目漱石の『三四郎』を、本郷界隈をじっくり歩くなら樋口一葉の『にごりえ』など、文学作品に触れてから出かけてみてはいかがでしょうか。昔から食文化の発展した町でもあるので、グルメを楽しみながら歩くのもオススメです。 |
取材担当:美月春菜 |
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