|
|
|
|
|
じんだいじ そばまつり |
|
調布市北部に広がる武蔵野の樹林に囲まれた深大寺は、豊かな自然と歴史に包まれた関東屈指の古刹。境内には重厚な寺院建築をはじめ、数多くの重要文化財が所有されており、辺りを囲む樹木や池が四季折々の風景を美しく彩っている。また段丘崖下から湧き出す清水が小川となって境内を流れ、門前ではこの豊かな泉水によって生まれた名物の深大寺そばを味わえる。今回は、紅葉が美しいことでも知られる秋の深大寺を歩き、歴史と風光を堪能する境内ウォーキングと、毎年10月に行われる「深大寺そば祭り」の様子をご紹介。深まる秋を感じながら、紅葉の中の深大寺を訪れ、賑やかな門前街をふらりと歩いてみよう。 |
|
|
|
|
全長 |
約1.5キロ |
|
所要時間 |
約2時間 |
Access :電車 |
京王線で調布駅下車 |
Access : 車 |
調布ICより国道20号で三鷹通りを北へ入り約20分 |
おすすめ
シーズン |
そば祭りと紅葉が楽しめる秋のシーズンがおすすめ。 神代植物公園の花散策ウオークもご覧下さい。 |
|
|
|
|
|
|
|
1 調布駅北口 |
↓ |
|
バス15分 |
2 深大寺バス停 |
↓ |
|
徒歩1分 |
3 深大寺 山門 |
↓ |
|
|
4 本堂 |
↓ |
|
|
5 元三大師堂 |
↓ |
|
|
6 釈迦堂 |
↓ |
|
|
7 そば守観音 |
↓ |
|
|
8 深沙大王堂 |
↓ |
|
|
9 大黒天・恵比寿尊像 |
↓ |
|
徒歩1分 |
10 深大寺水車館 |
↓ |
|
徒歩2分 |
11 深大寺バス停 |
↓ |
|
バス15分 |
12 調布駅北口 |
|
|
|
|
|
|
|
|
深大寺(じんだいじ) 水神伝説が残る縁結びの神と元三大師を祀る関東の古刹 |
|
京王線調布駅の北口から、バスで約15分。武蔵野の面影が残る調布市北部の自然豊かな雑木林の中に、深大寺の境内が広がっている。バスを降り、早速ターミナルから正面の表参道を入ると、名物のそば屋や土産物屋が参道脇に軒を連ね、沢山の参拝客の往来で賑わっていた。秋空の爽やかな紅葉シーズンには、人出も多くなるのだろう。参道の先には境内に続く石段があり、その上にはなんとも古めかしい山門が建っている。 |
深大寺前のバス停(右) |
|
|
|
茅葺き屋根の重厚な山門をくぐり、境内に入ると、右手に鐘楼、そして正面に大きな本堂が目に入る。ここが水神伝説、湧水、そばで有名な深大寺だ。まずは、左手にある手水舎に立ち寄り、それから本堂へと参拝に向かった。
深大寺は、天平5年(733年)に満功上人が創建した寺院で、都内では浅草寺に次ぐ古刹。初めは法相宗だったが、貞観年中(859〜877年)に高僧恵亮和尚が入山し、天台宗に改宗したという。目の前に建つ本堂は、江戸時代末に一度大火で焼失し、その後大正初期に再建されたもので、堂内には本尊の阿弥陀如来像を安置している。 |
|
|
大井戸のある手水(写真上)
鐘楼。明治3年(1870年)に再建され、基盤に3つの甕が埋め込まれている。朝昼夕と3回撞かれる梵鐘は、平成13年の鋳造(写真左) |
|
|
|
|
浮岳山昌楽院深大寺 |
|
|
|
本堂。大正8年(1919年)に再建、平成15年に改修 |
唐破風の屋根と彫り物が美しい |
|
|
|
本堂の柱 |
本堂前にある常香楼 |
常香楼の北側には、江戸時代の
大火の焼け跡が残っている |
|
深大寺は、松本清張著の『波の塔』の舞台にもなり、主人公の男女が散策したことから、境内周辺は「恋人たちの森」と呼ばれた時代があった。現在でも、ここは縁結びの寺としても知られているが、その由来は小説ではなく、寺の縁起として伝わる約1300年前の水神・深沙大王の伝説に基づいている。それには、こんなロマンスが語られている。 |
|
|
|
紅葉する境内の樹木 |
本堂左手の五大尊池 |
本堂脇のなんじゃもんじゃの木。
樹木の名はヒトツバタゴ |
|
亀島弁財天池。
水神伝説に登場する亀と
島が池の名についている |
|
昔、武蔵国柏野の里(現在の調布市佐須町)に右近という長者が住んでいた。この長者には虎という妻がおり、そして夫婦の間に女の子が産まれた。この子が成長して年頃になった時、この里に現れた福満という青年と恋に落ちたので、父は激怒し、二人の仲を裂くために、娘を池の中の離れ島へと移してしまった。これを悲しんだ青年は、玄奘三蔵法師が流沙河を渡った際に水神・深沙大王に救われたという故事を思い出し、自身も深沙大王に祈願した。すると、突然目の前に大きな亀が現れ、青年を背中に乗せて離れ島へと渡った。これを知った両親は、青年をただ者ではないと思い、二人が夫婦となることを認めた。この若い夫婦にはやがて男の子が産まれ、この子が後に出家して唐に渡った満功上人となり、父母のゆかりの地に寺を建て、深沙大王を祀った。これが深大寺の始まりで寺名の由来となった伝説である。 |
|
|
北側の段丘上に
建つ開山堂。
開基満功上人を祀る |
|
|
深沙大王堂。
お堂は昭和43年の再建。深沙大王は
深大寺縁起より縁結びの神とされる |
|
門前の参道を西へ歩き、境内の西端に建つ深沙大王堂を訪れてみた。小さなお堂だが、堂内の宮殿は寛文年間(1662〜1673年)の制作と考えられる市内最古の貴重な建物。宮殿内にはどくろの胸飾りをつけ、象皮の袴をはいて憤怒の形相をした、鎌倉時代作の秘仏深沙大王像の本尊が祀られている。
本堂から手水舎の西側にある石段へと向かう。石段の下には数々の文学碑が建ち並び、高浜虚子や中村草田男の句が碑面に見える。境内には15基ほどの句碑や歌碑が点在しているので、文学碑を巡りながら境内を散策するのもいいだろう。石段を上り、元三大師堂へと向かうと、読経する人々の声が聞こえてきた。お堂の前に立つ樹木の下には、鬼のような姿をした角大師の小さな石彫像があり、厄除に効くという不思議な魔力を放出している。 |
|
|
手水舎脇の石段 |
中村草田男の句碑。
「萬緑の中や吾子の歯生え初むる」 |
|
元三大師堂は、正暦2年(991年)に移座された、第十八世天台座主・元三慈恵大師の自刻像を安置するお堂。近世には元三大師が深大寺の信仰の中心であったため、今日も厄除け祈願の参詣者が絶えないところだ。毎年3月3・4日に行われる厄除元三大師大祭ではだるま市も開かれ、都民に広く親しまれている。 |
|
|
元三大師堂。幕末の大火後、慶応3年(1867年)に再建。
天井には明治初期の画家、河鍋暁斎作の「竜」が
描かれている |
|
|
店先に並ぶ厄除けだるま |
|
元三大師堂の南西にはコンクリート建築の釈迦堂が建っている。ここには、7世紀の白鳳時代に制作された金銅仏で、都内最古の仏像、銅造釈迦如来倚像が安置されている。珍しい白鳳仏なので堂内の奥の方に収蔵されているのかと思ったら、なんとここではガラス越しに仏像を公開していた。ここに鎮座する釈迦如来像は、端正で穏やかな笑みを浮かべ、流れるような衣をまとい、珍しくも椅子に腰掛けている。また、白鳳仏の隣には国の重要文化財に指定された深大寺の旧梵鐘も安置されているので、ぜひ一緒に拝観して頂きたい。 |
|
釈迦堂。白鳳仏は7世紀末頃制作の 国指定重要文化財。明治42年(1909年)に元三大師堂の壇下から発見された |
|
|
|
|
湧水と深大寺そば ハケ下から湧く清水が育んだ深大寺の名物 |
|
深大寺の境内を歩いていると、清らかな小川の流れや澄んだ池、また小さな滝などに所々で遭遇する。ここ調布市は、階段状の段丘面の境界、通称ハケと呼ばれる崖線があるところで、この辺りも昔から崖線下から湧く湧水に恵まれていた土地だ。深大寺も北側は段丘崖となっており、そのハケ下から湧き出す清水が小川となって周囲を巡り、境内周辺の暮らしを潤してきた。水の乏しい武蔵野台地の中で湧き出す豊富な泉水は、この地に水信仰をもたらし、水神と深沙大王が結びついたと考えられている。 |
|
|
|
深沙大王堂の北側にある湧水池。
清水はハケ下から湧いている |
門前を流れる湧水の小川 |
山門脇の龍口から落ちる滝 |
この湧水と結びついたものとして、もう一つ重要なのが、350年の伝統を持つ深大寺そばである。江戸時代、この辺りの土地は米の生産に向かなかったため、小作人たちはそばを作ってそば粉を寺に納め、寺ではそば打ちをして来客をもてなしていた。そして、そのそばを深大寺の総本山である上野寛永寺に献上したところ、門主が気に入って賞賛したことから、深大寺そばの名が全国に広まったという。当時はそばのさらし水に深大寺の湧水が用いられ、腰の強い美味しいそばが仕上がった。現在も門前には20軒ほどのそば屋が軒を連ねており、東京の観光名所となっている。 |
| |
|
参道脇に建つそば屋 |
|
|
|
山門脇に建つ清水比庵の歌碑。
「門前の蕎麦はうましと誰もいふ
この環境のみほとけありがたや」 |
門前の賑わい |
そば屋の店先で水車が回る |
|
|
|
店先に干したそば用のざる |
雑木林の中のそば屋 |
十割田舎そば |
そば屋や土産物屋が並ぶ深大寺の門前は、通年観光客で賑わい、参拝後の散策がとても楽しいところだ。ちょうど樹木が紅葉し、門前街の景色も一層秋らしい風情に彩られていた。細い参道を歩いていると、小さな秋を描く人、賑わいを写真に撮る人にもすれ違う。店先ではだるまや干支の置物の隣で、ちまきや饅頭の湯気がホクホクと上がっている。坂を上がり、裏手の雑木林を歩いていると、そばはいかが、と呼びかけられた。昼下がりの昼食は、色づく紅葉の木陰で食す、素朴な田舎そばに決めた。 |
|
|
|
門前の売店 |
売店の商品も色とりどり |
名物のそばぱん |
|
|
|
|
お土産用の深大寺そば |
土産物屋 |
らくやき深大寺窯の店先 |
売店ではそばがらも販売 |
|
|
|
深大寺そば祭り そば守観音を祭る、寺院とそばの秋の大祭 |
|
深大寺では、毎年10月中旬にそば祭りが行われている。本堂の前で、そば職人たちが地場のそば粉で昔ながらのそば作りを披露し、出来上がったそばを境内にあるそば守観音に奉納するという秋の大祭。この珍しい儀式を見物しようと、ようやく秋めいてきた深大寺へと出かけた。当日は朝から人出が多く、沢山の見物客が境内を訪れていた。 |
|
|
|
深大寺そば祭り |
祭りの賑わい |
祭りの儀式は、そば守観音の供養祭から始まった。本堂東側の庫裡から、僧侶たちが列を成して出発する。最初に赤い袈裟を着た僧侶たちが歩き、その後から紫の袈裟を着た高僧、そしてそば粉を輿に乗せて担いだそば職人たちが続き、深大寺の門前をゆっくりと練り歩いてくる。山門を入った一行は本堂前へと向かい、そば職人たちは儀式用の舞台へ進み、僧侶たちは舞台に面して置かれた座席に座った。
|
|
|
|
庫裡を出発する僧侶たち |
参道を練り歩く僧侶の行列 |
|
|
|
山門をくぐって境内へ |
そば粉を担いだそば職人たち |
一行は本堂の前へ |
白い装束を着たそば職人たちがかしこまって舞台に上がり、一人がそば粉を練り始める。僧侶たちは一斉に読経を始め、その間、職人たちは練ったそば粉を麺棒で伸ばし、手際よくそば生地を包丁で切っていった。
|
|
|
|
そば打ち披露の儀式がいよいよ始まる |
僧侶たちの読経が響く |
|
|
|
最初にそば粉を練る |
麺棒で生地を伸ばす |
伸ばした生地を包丁で切る |
|
|
|
切ったそばを三方に盛る |
そば打ち披露の儀式は終了 |
境内に集まった沢山の見物客 |
三方に盛られたそばを、山門脇に建つそば守観音に奉納する。僧侶とそば職人たちが列を成し、花や供物が捧げられているそば守観音の前にやって来ると、高僧がそばを奉納して経を上げる。その後、そば業者や信者など多くの関係者が参拝し、そば守観音供養祭は終了した。 |
|
|
|
そば守観音へ向かう僧侶たち |
そば職人がそばを運ぶ |
そば守観音にそばを奉納 |
|
|
|
そば関係者も多く参拝する |
そば守観音 |
奉納されたそば |
僧侶たちは、再び参道を練り歩き、次に深沙大王堂へと向かった。この日はお堂が開かれて深沙大王祭も行われた。お堂に入った僧侶たちは、経典を扇のように勢いよく開きながら読経する、大般若転読会を行なった。その後、深沙大王堂を出ると、僧侶一行はお堂の南側に建つ大黒天と恵比須尊をお祭りした。 |
|
|
|
深沙大王祭が行われる深沙堂 |
迫力のある大般若転読会 |
大黒天と恵比須尊を祭る |
そば祭り当日は、深大寺通りに建つ深大寺水車館で「そばがき」体験も行われた。実際に水車で挽いたそば粉を使って、そばがき作りと昔ながらの素朴な味を堪能できる。どんな味がするのか、早速試してみると、作り方はなんとも簡単だった。係の人が器にそば粉を入れ、お湯を注いでくれる。それを自分で箸を使ってぐるぐる回し、まんべんなく練るのだ。お湯は少量なので、練る生地は固め。その生地に醤油をかければ出来上がりだ。味の方は、柔らかい餅のような歯ごたえで、ほんのりそばが香るシンプルな味。そばがきは作るのも面白いので、小さな子供から大人までが楽しそうに食べていた。 |
|
|
水車小屋の中で石臼がそば粉を挽く |
水車館の庭に並び、1杯100円で
そばがきが配られる |
|
|
深大寺水車館 |
|
お湯で練ったそばがき。
ここに醤油をかけて食べる |
|
|
|
ちょっと足を延ばして 深大寺周辺・神代植物公園コースへ |
|
深大寺の周辺には、深大寺城跡や水生植物園、そして広大な敷地に4500種の植物が育つ神代植物公園もあるので、ぜひ立ち寄って頂きたい。また、深大寺通りの南方には「深大寺温泉ゆかり」もあり、天然温泉が楽しめる。深大寺を訪れた後は、これら寺院周辺を巡るウォーキングコースもおすすめ。多摩武蔵野ウォーキング「深大寺周辺・神代植物公園」のコースを参考に、近隣スポットへも足を延ばしてみよう。 |
|
|
|
神代植物公園 |
|
|
|
|
|
【取材後記】 深大寺・そば祭り近隣の〜クウ・ネル・アソブ〜 |
|
深大寺の門前 |
|
深大寺城跡の広場 |
|
深大寺には、深大寺そばや厄除だるま、深大寺ビール、ゲゲゲの鬼太郎グッズなど、さまざまなご当地土産が売られているが、もうひとつ「赤駒」という郷土玩具もある。これは地元で作られてきたわら細工で、稲穂の長い尾と紅白の手綱がついた素朴な馬の玩具。万葉集の防人の妻が詠んだ歌「赤駒を山野に放し捕りかにて多摩の横山徒歩ゆか遣らむ」にちなんで作られ、女性が男性の無事を祈るという意味を持つ馬の人形らしい。縁結びの寺を訪れたら、女性から男性に向けて赤駒をプレゼントするのはいかが?きっと2人にとって素敵な思い出となるだろう。
さて、今回は深大寺近隣で楽しむクウ・ネル・アソブ。クウ・スポットは、なんといっても深大寺名物のそばである。そば屋は門前や深大寺通りに多く並んでいるので、通りを歩いて好みの店を探してみよう。またここでのネル・スポットは、深大寺南側の丘陵上に広がる深大寺城跡の広場がおススメ。とても日当たりのよい静かな広場で、大きな木の木陰もあり、途中でネルには最高の場所だ。そしてアソブ・スポットは、境内北側の神代植物公園へ。園内散策や植物観賞のほか、花をテーマにしたイベントも行なっているので、ぜひ深大寺散策の際に訪れてみよう。
|
取材担当:美月春菜 |
|
|
|
|
|
|