「寅さんは損ばかりしながら生きている。江戸っ子とはそういうものだと、別に後悔もしていない。」柴又駅前のフーテンの寅像の台座には、山田洋次監督の言葉で寅さんの人物像が刻まれています。人情深くて家族思い、一生懸命なのにどこか滑稽で、親しみ深いキャラクターの寅さんですが、そんな寅さんが何度旅立ってもまた帰りたいと思わせる柴又という町は、平成の時代にあっても訪れる人を温かく迎えてくれる、人に優しい町です。
『男はつらいよ』シリーズが終了し、寅さんは昭和の幻影となってしまいましたが、平成13年、再び柴又の町がホットな話題に包まれました。帝釈天参道近くに建つ柴又八幡神社の敷地内には、約1400年以上前の6世紀頃に築かれた古墳が残っていますが、その発掘調査の際に、なんと寅さんにそっくりな帽子をかぶった埴輪が出土したのです。これは学術的にも重要な資料だということですが、驚くべきは、その埴輪の顔が寅さんに酷似していたことだけでなく、埴輪の出土した日が寅次郎役の渥美清さんの命日だったということ。柴又と寅さんの間をつなぐ遠い過去からの不思議な縁を感じずにはいられない出来事でした。「寅さん埴輪」は、現在、葛飾区郷土と天文の博物館に展示されており、葛飾柴又寅さん記念館でもその複製を見ることができます。
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